『ボトルのある生活』

ウイスキー

学校の自由研究って、
もっとこう──科学とか、植物の観察とか、
そういうのが王道じゃないか?

時代も変化してきいるのか・・・。
いやいや、それは違うような気がしてならない・・・。

なのに娘は言った。

「私、ウイスキーの瓶を観察する」

いや待って、
まだ開けてもないし、
中身すら飲めないし。

でもそのとき、
何とも言い表せない気持ちになって、
笑みをうっすら浮かべた。

 

「観察1日目:変化なし」

娘は観察ノートを作った。
タイトルは、

『ボトルのある生活』

1日目、瓶の写真を撮って、
“今日は変化がありませんでした”とだけ書いていた。

いや、ある意味、それ正解!!
でも、彼女の中ではもう何かが変わり始めていた気がする。

 

「ラベルの凹凸に萌える中学生」

ラベルを指でなぞって、
「ここだけ少しざらざらしてるんだよ」と報告してくる。

妻:「マジで自由すぎる研究や・・・。」

僕:「研究って、そういうもんやで(知らんけど)(笑)。」

その夜、
娘はラベルの文字をスケッチしはじめた。

 

「香りの観察は・・・まだ早い」

「お父さん、開けてもいい?」

いやいや、まだ早い、
まだ飲める年じゃないし(笑)!!

香りも味も、
きっとまだわからない。

でも、

惹かれる“理由”だけは、同じだ。

 

「僕の観察ノートは、心の中にある」

誰にも見せてないけど、
僕にも“観察ノート”がある。

心の中に。

毎日、同じ場所に置かれた瓶。
少しずつ、生活に馴染んでいく姿。

それを眺めて、
感じたことを、言葉にしていく。

まるで、日記みたいに。

 

【AGのひとこと】

ウイスキーの瓶って、
見た目はずっと変わらない。

でも、
それを囲む人や時間は、
じわじわと変わっていく。

もしかすると、
瓶そのものより、

“一緒に観察する時間”のほうが、
僕の心を酔わせてるのかもしれない。

AGでした。

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